経済

 アローの不可能性定理

というわけで、アローの不可能性定理をきちんと説明してみる。N人の人がいて、すくなくとも3つ以上の選択肢、a,b,c,d,...があるとする。それぞれの選択肢は、一つの社会状態に対応している。例えば、一人首相を選ばなければならないときには、a,b,c,d,...が…

 男の子?女の子?

(追記:判りにくかったところを少し書き直しました。2/11) この前の話題に少し関連した話を。欧米では男児も女児も平等に扱われるのに、アジア、ラテンアメリカの発展途上国などでは女児が差別されている、ということがよく言われる。例えば前にも話したよ…

 B型肝炎の話の続き

ティッピング・ポイント―いかにして「小さな変化」が「大きな変化」を生み出すか作者: マルコムグラッドウェル,Malcolm Gladwell,高橋啓出版社/メーカー: 飛鳥新社発売日: 2000/02メディア: 単行本購入: 29人 クリック: 711回この商品を含むブログ (63件) を…

 B型肝炎と性比の関係?

JPEの最新号を見ていたら、B型肝炎の罹患率と性比が関係しているという話があった。*1先進国では男女の比率はおおよそ1だが、よく知られているように、アジアの発展途上国では男女の比率が1.05以上にも上る。*2この数字は、女児の(出生前あるいは出生後の)…

 教科書

一流経済学者(McAfee)による、初のオープンソースのミクロ経済学の教科書。 彼のウェブ上のコメントより抜粋。“......They*1 issue new editions frequently to kill off the used book market, and the rapidity of new editions contributes to errors and…

レーヴィットへの蜂の一刺し - 中絶犯罪相関理論は正しいか?

レーヴィットの恐らく最も有名な論文*1が、批判を浴びている。先週号のエコノミストによると、ボストン連銀のFoote and Goetzのワーキングペーパーの中で、元論文でのいくつかのミスが指摘されているらしい。 まず簡単にドナヒュー&レーヴィットの論文をま…

 刑の厳罰化は、犯罪を減らさない?

犯罪をなくすにはどうすればいいか。全ての犯罪に死刑を適用すればよい。というのは冗談だが、犯罪をする人間を減らすには罰を重くすれば良いと考える人は多い。ベッカーとかも、そんなことを言っていたはず。しかし本当にそうか? 次のような思考実験をして…

 Pleasant Surprise

Aumann and Schelling! 予想を完全に外されてしまった。もちろん、いい意味でだが。二人とも、十分ノーベル賞を受けるにふさわしい人物である。受賞理由は、"for having enhanced our understanding of conflict and cooperation through game-theory analys…

 ノーベル経済学賞

次の月曜日に、ノーベル経済学賞の発表がある。年々予想するのが難しくなってくるのだが、マッチング理論の業績に関して、Gale&Shapley+この前紹介したRoth、といった組み合わせで受賞があってもおかしくないような気がする。まだ今回はちょっと早いかもし…

 臓器移植の経済学 その3

さて、これらのモデルは、ただの机上の空論ではない。 Al Rothのところで見つけた、最近の記事へのリンクはこちら。ttp://www.boston.com/news/nation/articles/2004/06/05/cross_donor_system_planned_for_regions_kidney?mode=PF (Boston Globe)ttp://www…

 臓器移植の経済学 その2

まず、いくつかメカニズムの満たすべき要件が考えられる。単純化のために、間接的交換のオプションがないとして、次のようなメカニズムを考えてみる。n人の患者がどのドナーの腎臓を希望するか同時にアナウンスし、 上の例のように2組のペアの希望が一致し…

 八百長についてもう一言

ttp://www.spokesmanreview.com/business/story.asp?ID=68243Levitt co-authored a study that analyzed the won-loss records of sumo wrestlers in tournaments and concluded the matches were rigged. Levitt says he didn't hear a peep from the Japan…

 臓器移植の経済学 その1

臓器移植の経済学*1といっても、腎臓いくら、肝臓いくらという物騒な話ではない。ではいったい何の話か?通常は、臓器移植とは臓器の贈与であり交換ではないのだから、ブラックマーケットを除けば、そこに近代経済学の入り込む余地はないように見える。しか…

 Freakonomics/S.D.Levitt and S.J.Dubner  

Freakonomics: A Rogue Economist Explores the Hidden Side of Everything作者: Steven D. Levitt,Stephen J. Dubner出版社/メーカー: William Morrow & Co発売日: 2005/05/01メディア: ハードカバー クリック: 8回この商品を含むブログ (12件) を見る "Peo…

Monkey Business

Nobody ever saw a dog make a fair and deliberate exchange of one bone for another with another dog. Nobody ever saw one animal by its gestures and natural cries signify to another, this is mine, that yours; I am willing to give this for th…

 追記:美人投票で相場に勝つ 

やっぱ、細かいところ間違えてたんで直しときました。(ジャーナルの名前も間違ってたし)。id:NATROMさんの紹介しているゲームと同じで、どうやら賞金は定額らしい。ただ、20から30が平均というのは、条件にかかわらず大体正しいようだ。賞金の額を上げ…

 美人投票で相場に勝つ

金融市場の例えとして、美人投票の話(ケインズ)がよく使われる。何人もの女性の中から美人をひとり選べ、ただし、平均して最も選ばれた人を選ぶべし、というあれだ。このゲームに勝つためには、自分が美人だと思う人に投票するのじゃなくて、他の人が投票す…

 経済学帝国主義

経済学帝国主義なんていわれても、もう誰もピンと来ないかもしれない。Googleで検索しても、出てくるのはマルクス主義の本ばかりだろう。この言葉自体はだいぶ昔からあるが、有名になったのは、ゲーリー・ベッカーの一連の仕事が世に出た時だ。彼は、結婚、…

ジェンダーと競争

なぜ競争的な仕事には比較的女性が少ないのか? そのような職業はえてして賃金も高いので、これはジェンダー間の所得格差にも関係する重要な問題のはず。この原因としては、差別もあるだろうし、選好の問題もあるだろう。しかしここでは,それとは別の説を紹…

伝染病とネットワーク

今年アメリカは、深刻なインフルエンザワクチン不足に悩まされている。きっかけは、アメリカにワクチンを唯一供給しているイギリスの2社(Chiron Corp,Aventis Pasteur)のうちの一つに施設の汚染が発見され、ワクチン製造が一時停止に追い込まれたことだ。こ…

 幸福の測り間違い(その2)

引越しで忙しく、一ヶ月もあいてしまった。さて、前の話の続き。前回は、記憶されている幸せ度(苦しみ度)と瞬間瞬間の幸せ度は、実はあまり整合的じゃないんだよっていう話だった。彼はこのテーマに関していろいろと研究しているようで、ひとつの応用例と…

 幸福の測り間違い(その1)

しばらく学会に行くなどの用事で忙しく、更新できなかった。昔から、日記をつけるのが苦手だった。三日坊主にならないよう気をつけよう。さて、「幸福」である。 Daniel Kahnemanというノーベル経済学賞を最近受賞した心理学者がいる。最近講演を聴く機会が…