経済

 最後の一人

そもそもは、経済学者の倫理感覚は他の分野の人と違うよね、っていう話をパーティでしてて。一つ挙げられた例は、こんなのだ。世界に二人の人間、個人1と個人2しか残されていないとする。で、個人1が個人2を殺してしまったとしよう。この場合、個人1は…

 経済学の倫理的なインプリケーションは何か?

なにもありません。ある倫理的な基準を置いたときにある状態・政策が望ましいと言うのが経済学で、倫理自体は、経済学からは導かれず、常に外部から与えられるものなのです。 というとここで話が終わってしまうのだが、しかし経済学があたかも倫理的なインプ…

 リクルーティング

助教授のリクルーティングの時期もそろそろ終わり。つい先日には、うちに来たキャンディデイトを招いてディナーパーティーがあった。今年は理論家では公理的意思決定理論をやってるやつが多くて、彼もその一人。「どう、仕事取れそう?」とか聞いてみると、…

 ベン&ジェリー 対 アマゾン

前に書いたことと似たような話を見つけた。(ベン&ジェリー 対 アマゾン)。具体例がたくさんあって、読みやすい。彼はソフトウェアの開発者らしいが、彼いわく、コンピューターサイエンスの学生はミクロ経済学を学ぶべきなんだそうだ。 ちなみにベン&ジェ…

 アウトサイダーはインサイダーと比べてどれだけ不利か?

またゴキブリみたいな話だけど、今度は人間。だいぶ前の伝聞(ただし本人からの)なので詳細は保障できない。 それが起こったのは、彼が株式市場を模した実験をしたときのことだ。彼は、某有名工科大学の学部生を相手に、翌日行われる市場模擬実験の説明をし…

  混合医療解禁?

混合医療導入に関する話がNATROMさんのところに。 混合医療を解禁すると恐らく何が起こるかというと、自由診療のほうが利益率が高いので、どちらにも振り分けられるリソースは自由診療の方に割り当てられるようになる。たとえば、より多くの医者とベッドが自…

 ノーベル経済学賞

ハーヴィッチ、マスキン、マイヤソンだそうで、これはめでたい。 つい先日行われた、ハーヴィッチの90歳の誕生日記念会議のサイトをリンクしておきます。ここで、マイヤソンによる、ハーヴィッチの業績とメカニズムデザインの歴史(追記:ではなくて、社会主…

 政治参加する人々のタイプについて

なかなか面白い記事発見。この手の話は、行動経済学の枠組みできちんとモデル化できるんじゃないかなあ。政治的バイアスがかかっているタイプと、実際に意味のある情報を持っているタイプに分けて考えて......

 肥満の友人を持つと、肥満になる?

友人・兄弟・私…肥満の連鎖 「抵抗感が薄れる」見方 その結果、肥満の友人がいる人は、肥満の友人がいない人に比べて57%も肥満になりやすいことがわかった。また兄弟姉妹が肥満だと40%、配偶者が肥満だと37%、肥満になりやすかった。 食生活や生活…

 マーシャルズ・テンデンシーズ:エコノミストは何を知ることが出来るのか?

Marshall's Tendencies (Gaston Eyskens Lectures): What Can Economists Know?作者: John Sutton出版社/メーカー: MIT Press発売日: 2002/01/25メディア: ペーパーバック クリック: 4回この商品を含むブログ (1件) を見る "How many times have we heard: "…

 通貨のパズル

この前のPodcastのリンクから、Russ Robertsのブログ、Cafe Hayekにいってみて偶然次のようなパズルを見つけた。 アメリカ人の旅行者が、人里はなれた小島に休暇を過ごしに出かける。その島の地元の人達は、物々交換による生活を営んでおり、貨幣を使わない…

 ミクロ経済学の新しい教科書

ミクロ経済学作者: 林貴志出版社/メーカー: ミネルヴァ書房発売日: 2007/04メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 89回この商品を含むブログ (9件) を見るを頂いた。薄いけれども、痒いところに手が届くような議論がいろいろあって、結果的には読みやすい一冊…

 ネットワークの科学

Six Degrees: The Science of a Connected Age作者: Duncan J. Watts出版社/メーカー: W W Norton & Co Inc発売日: 2004/02/01メディア: ペーパーバック購入: 1人 クリック: 1回この商品を含むブログ (6件) を見る Linked: How Everything Is Connected to E…

 Pay-Per-Click(ペイ・パー・クリック)広告とGSPオークション、その2 理論編

今回はGoogleの秘密に理論的に迫ってみる。話を簡単にするために、二つのリンクのオークションに三人が参加しているとしてみよう。一番上にあるリンク - 仮にリンク1と呼ぶ - は一日当たり200クリック、そしてその下にあるリンク2は、一日当たり100クリッ…

 ジョン・ベイツ・クラークメダルが初めて女性の経済学者に

2年に一度、優れたインパクトのある研究をした40歳以下のアメリカの経済学者に授与される、ジョン・ベイツ・クラークメダルという賞がある。とても権威のあるもので、この賞をとった人の40%近くが後々ノーベル賞を取っているという代物だ。例えば過去の…

 Pay-Per-Click(ペイ・パー・クリック)広告とGSPオークション:Googleの集金マシーンについて

Googleの収入のほとんどは広告収入だ。だから、Googleの広告のシステムを理解することは、Googleを理解することだ、といってもいい。いったい、あれは普通の広告とどこが違うんだろう?なにか裏に複雑なシステムがあるのかと思っちゃう人もいるかもしれない…

 社会を深く理解するには、あなたは陰謀論者でなくてはならない。

アメリカの経済支配者たち (集英社新書)作者: 広瀬隆出版社/メーカー: 集英社発売日: 1999/12/01メディア: 新書購入: 3人 クリック: 20回この商品を含むブログ (12件) を見る新聞に書いてあるような「客観的」な事実と、確たる証拠がないような「妄想」に依…

 新古典派vsケインジアンなんて対立軸はもう古い。今ホットなのは、誘導系vs構造推定だ!

リクルーティング+アドミッション+レフェリー+授業等々が重なって、死ぬほど忙しい...... ところで、yyasudaさんのこの記事のコメント欄が、ちょうど誘導系vs構造推定の話題で盛り上がっていたようですね。ここら辺の雰囲気は、日本の大学院生にちゃん…

 なぜ白人の生徒は黒人の生徒よりいい点をとるのか?

エミリー・オスターのことはもう記事にしたけど、残りの12人を下のリストにそって順に一般向きの記事にしていったら、結構読んでくれる人がいるんじゃないか?、ということを思いついた。ただ一人でやるのはめんどくさいので、バトンみたいにして誰か一人…

 "Who is the future of economics?"

ってことで、NYタイムスの記者が、20人かそこらの著名な経済学者にインタビューしたそうだが、特によく名前の挙がった人が13人ほど。あのエミリーさんも含まれている。(エミリー・オスターについては以下参照:http://d.hatena.ne.jp/tazuma/20060124 http:…

 「ウェブ進化論」に「書かれていない」こと。どうして儲かるの?

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)作者: 梅田望夫出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2006/02/07メディア: 新書購入: 61人 クリック: 996回この商品を含むブログ (2353件) を見る いまさらながら「ウェブ進化論」を読んだんだけど、確…

グラミン銀行

グラミン銀行の創設者のムハマド・ユヌスにノーベル平和賞が授与されたそうな。ユヌス氏は経済学者で、グラミン銀行のアイデアも現代の経済学に密接に関連しているから、今年はノーベル経済学賞が2つ出たみたいな感じでうれしい。 グラミン銀行が何をやって…

行動経済学へのバックラッシュ その1

最近目立ってきた行動経済学への批判。 下にいくつかリンクを張っておく。コメントは後ほど。 A. Rubinstein ttp://arielrubinstein.tau.ac.il/papers/behavioral-economics.pdf ttp://arielrubinstein.tau.ac.il/papers/74.pdf A. Shaked ttp://www.wiwi.un…

 オンラインオークションで談合?

オンラインオークションといえばこんな話もあった。*1昔々の話、まだ入札額を手動で上げていくことができた前世紀の話だ。*2その頃、次のような「変わった」現象がeBayでよく見られた。例えば、あるオークションの期限が2週間だとする。その2週間の間、なぜ…

 eBay、ヤフオクなどのオンラインオークションはセカンドプライスオークションなのだ

この前話したオークションのルールを次のように変えてみよう:(1)負けた場合は何も払わない、(2)買った場合は相手の入札額を支払う。このルールと元のルールを比べると、元のルールに比べて支払う金額が勝ち負けに関わらずbだけ下がっていることにな…

 オークションの問題2

リンク先に解答があるんだが、一応簡略な解答を。賞品を獲得した人が、相手の入札額の2倍を払う、というのが答え。何故か?相手の入札額をb、自分の評価額をvとする。この支払いルールに従うと、自分の利得は、(bとv以外には)自分が買ったか負けたかに…

 オークションの問題

つぎのような秘密入札方式 (個々の参加者はほかの参加者の入札額が分からない方式) のヘンなオークションを考える.ただし,参加者は2人とし,参加は強制されるとする (罰ゲームのようなもの).オークションの対象となる賞品は,入札額のいちばん高い入札者 …

 金持ちになれるかは、生まれできまる?

Nature vs Nurture(生まれと育ち)の関連話を一つ。マンキュー(Mankiw)のブログに、学歴や収入はどこまで生まれによるか、という話が出ていた。「生まれ」っていっても、裕福な家に生まれるとか、よい家庭環境で育つとか、そういう意味じゃない。純粋に遺伝…

 早生まれは損?

「早生まれ」は学歴でも不利?とのこと。初等教育を始めるのは遅い方がいいってことですか?うーむ、半信半疑。ひょっとしたら、知能の発達の問題じゃなくて、体の発達が比較的遅れている人はいじめられがちで、それが成績に影響するのかもしれない。入学時…

 アローの不可能性定理その2

さて、約束どおり、日記一日分で証明してみる。*1 定理. (UD),(P),(IIA)を満たす社会的ルールfは、(ND)を満たさない。 証明.1.選択肢aがすべての人のランキングの最下位にあるとする。すると、(P)により社会的選好においてもaは最下位にある。2.1のような…