経済
ついにきましたね。予想してから7年か。その間にデヴィッド・ゲールは亡くなってしまいましたが。受賞理由はマーケットデザインの理論。ゲール&シャプレーが60年代に打ち立てた理論をロスが発展させていろいろと応用したというところですね。最近では臓…
経済学でよく使われる「善意」には二種類ある。ひとつは他人の幸せ自体をうれしいと感じる真の「善意」、もうひとつは善行をしている俺/私って素敵と感じることから効用を得るような自己中な「偽善」である。*1後者の善意はしばしば「不純な利他主義」と呼ば…
一部の計算機科学者に言わせると経済学の市場の理論は使えないということらしい。なぜかというと、そもそも消費者の効用最大化問題さえNP困難ということ。コンピュータにも大変な計算が何で人間に出来るだろうかというわけだ。しかし経済学者からすると、そ…
"...a good model in game theory has to be realistic in the sense that it provivdes a perception of real life social phenomena...These (relevant factors) need not necessarily represent the physical rule of the world." A. Rubinstein 1991 最…
以下はあのAngrist and PischkeのJEP論文の超おおざっぱなまとめ。読みやすさを重視するため本文に足したり引いたりしているところが多々あるとお断りしておきます。(追記:Regression discontinuity designの例を足しておきます。) リーマー批判80年代にA…
経済学を王座から引きずり下ろせ! JBpress(日本ビジネスプレス) 治せない病気があるから近代医学を否定しましょうみたいなロジックで否定されてもね。*1 もっとましなものがあれば、喜んで下りるのだけど。 というか、そもそも日本では王座についてないんだ…
学生時代からすでに天才といわれていたサミュエルソン。Ph.D.の口頭試問で、シュムペーターやレオンチェフをまえにひるむことなくまくしたて、逆に教授たちのほうが話についていくのに精一杯である始末。 口頭試問が終わってサミュエルソンが出て行くと、シ…
アメリカ経済学会125周年記念のカレンダーが届いた。その昔、スティグラーなどが中心になって似たようなカレンダーを作成したことがあったらしいのだが、それをまたやってみようということらしい。どういうカレンダーかというと、一月ごとに著名な経済学者の…
ある概念を説明するのに、具体的な例をあげて説明するより抽象的に説明したほうがわかりやすいことがある。例えばモラル・ハザードとかはそのいい例だろう。 これが正しいという定義は無いと思うが、モラル・ハザードの意味はだいたいこんなところだ。 (1)…
OstromとWilliamsonか。つまり、組織の経済学が受賞ということなんだろう。Williamsonは企業特殊的投資/技術とかホールドアップの話で有名な人。日本の経営が世界の注目を集めていた頃、日本の組織の利点を説明するのにしばしば援用される理論だった記憶があ…
どうやらヤバい経済学 [増補改訂版]の続編が出るもよう。題名は、 「超ヤバい経済学」 (原題は"Super Freakonomics"。邦題は予想だけど、これはもうこれしかないだろ。) キンドルは、こういう一般書を買うときに便利だね。この手の一般向けハードカバー本…
前にどっかのブログで見かけたBulowの銀行分割案について、BulowとKlempererが実際に記事を書いて説明しているようだ。元記事はここ(http://www.voxeu.org/index.php?q=node/3320)。 彼らの提案を説明するために、シティグループを例にとってみよう。シテ…
ここ数ヶ月、パイプカットをする男性が急激に増えているのだそうだ。理由は恐らく(1)景気の先行きが不透明なのでもう1人子供を育てる余裕がないということと、(2)会社から解雇される前に保険を使いたい、ということだろう。ところで、特に金融業界の人…
3年前、「B型肝炎の両親からは男の子が生まれやすい」という論文を紹介したが、これはどうやら間違っていたらしい。というか正確には、「B型肝炎の両親からは男の子が生まれやすいことを使ってMissing Womenのかなりの部分が説明できる」、というのが間違っ…
授業でこの前「ボランティアのジレンマ」という実験をやってみた。例えば次のような状況を考えてみる。 夜中に誰かの「助けて」という叫び声で目が覚めた。あなたには二つの選択肢がある:(1)警察に電話をかける、(2)ベッドから出るのが面倒なのでまた…
AEAの新しいジャーナルがぼこぼこ届きだしたんだけど、マクロのをのぞいてみると、上のようなお題についてのウッドフォードの短い論文が載っていた。門外漢にはちょうどいいまとめになるかもしれないので、ものすごく大雑把だけど、簡単にまとめてみる。 1…
http://d.hatena.ne.jp/tazuma/20081219 1.人間が合理的に行動しないのはその通り。では、どのタイプの非合理性が行動を規定すると考えればいいのか?ある特定の場合にはデータからおおよその傾向は分かるだろう(401(k)はいい例)。ではそうでない場合は…
Nudge: Improving Decisions About Health, Wealth, and Happiness作者: Richard H. Thaler,Cass R. Sunstein出版社/メーカー: Yale University Press発売日: 2008/04/08メディア: ハードカバー購入: 3人 クリック: 35回この商品を含むブログ (19件) を見る…
ターゲットは0から0.25%の間とのこと。http://www.nytimes.com/2008/12/17/business/economy/17fed.html?_r=1&hp
今年は計量でしょう。Hansenあたりがとりそうだけど、それはかなりオッズが低いようでつまんないから、ここはマイクロ計量で先日読んだ本がなかなか面白かったManskiを押してみたい。彼の研究はとてもユニークで(アンチ点推定なところとか)、ノーベル賞向…
ヘックマンの一般向けの講演にいく。こんな話をしていた。 1.収入や最終学歴とIQ(認知的能力)には正の相関がある。 2.しかし「非認知的能力」(動機付け、パーソナリティ、モラル意識、忍耐力、計画性などなど)とも正の相関がある。解釈としては、「や…
悪夢はまだまだ終わりそうもないわけだが、このNYTimesの記事の中の、バーナンキとポールソンがワシントンで議員の代表達に彼らのBailoutプランを説明しているときの模写が凄い。 バーナンキが、このプランなしには月曜日までに経済が消滅しているかもしれな…
心理学で、サルを使った次のような有名な実験があるらしい。 まず猿に赤と青のM&Mのどちらかを選ばせ、赤を選んだ場合、次に青と緑から1つ選ばせる。この場合、青と緑では緑のM&Mを選ぶ確率が高くなることから、赤と青では赤の方が好みだっただけなのに「青…
をid:svnseeds氏のリンクから読む。ざっと最初の方の記事だけ目を通したけど、これは結構シンプルな話なんじゃないかな。 つまり、1.GDPは分配の問題を捨象している。だから、GDPのみを見ることは特定の価値観(社会厚生関数)を前提していることに限りなく…
あえて意外な取り合わせを狙ったからガゼルと狼の例にしたけど、本当は別の例にしたほうがハンディキャップ原理とシグナリング理論の類似は見やすいだろう。例えばクジャクの羽がいい例だ(そもそもザハヴィの原論文からの引用も、性選択の話だしね)。大き…
“It is possible to consider the handicap as a kind of test imposed on the individual. An individual with a well developed sexually selected character, is an individual which has survived a test. A female… can discriminate between a male wh…
つい先日、よく名前の知られている某殺人犯の死刑が執行された。それに最近死刑が頻繁に行われることもあって、死刑に関する話題がよくメディアに取り上げられている。来年から裁判員制度が導入されることもあり、一人一人が死刑制度について考える機会が多…
オバマついでに、経済学における差別の取り扱いについて一言触れておこう。経済学の中では、次のような2種類の差別を考える。 (1)選好による差別(taste-based discrimination) (2)統計的差別(statistical discrimination) (1)はベッカー(19…
また訃報だ。アナウンスメントはここ。彼の生涯が簡単にまとめらているが、一つ有名な業績で載っていないものがある。それは、彼とスティグリッツによる、最適ポートフォリオの理論におけるtwo-fund separation theoremだ。ただし、彼自身はこの論文がそれほ…
デビッド・ゲールが亡くなっていたとは知らなかった。去年の夏ストーニー・ブルックに招待された時に、彼の85歳記念のカンファレンスと誕生日記念ディナーがあって、そこで初めて見かけたんだが、その時はまだまだ元気そうだったのに。 そのカンファレンスの…