David Cass (1937-2008)
また訃報だ。アナウンスメントはここ。彼の生涯が簡単にまとめらているが、一つ有名な業績で載っていないものがある。それは、彼とスティグリッツによる、最適ポートフォリオの理論におけるtwo-fund separation theoremだ。ただし、彼自身はこの論文がそれほど好きではないようだが。
Inside the Economist's Mind: Conversations with Eminent Economists
- 作者: Paul A. Samuelson,William A. Barnett
- 出版社/メーカー: Wiley-Blackwell
- 発売日: 2006/12/22
- メディア: ペーパーバック
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いろいろ話すと長くなるので、上の本からちょっと超訳して引用する。
まずは彼の尊敬する師匠の宇沢宏文とジョブマーケット関連の、ちょっとおかしなエピソード。
彼(宇沢)は、そのころ人を探していたコウルズ財団のクープマンスと連絡を取ったんだ。宇沢はこっちのほうが(Purdue大学より)いい就職先だと判断したんだが、彼の学生の就職に関する考え方というのは、一つ以上の場所からオファーをもらうのは道義にもとる、というものだった。だから俺は、ボストンで開かれていた冬の学会に就職活動にいくとき、コウルズ財団のインタビュー以外には、自分でみつくろってきた幾つかのインタビューだけーしかも結果は散々だったーしか予定がなかった。俺はほとんどの時間をホテルの部屋でフットボールを見ながらすごすことになって、しかも同室のカール(シェル)はインタビュー続きで息つく暇もないときた......
彼の理論に対する考え方が垣間見えるのがこの部分。
(カーネギー・メロン時代、新しいマクロ経済学にあまり興味がなく、ルーカスと研究上での接点はなかったと語った後で)たぶんそれは、ボブ(ルーカス)がシカゴの伝統の影響下にあって、データによるテストをー俺にはそれがなにを意味するか全くわかんねえがー重視していたからだと思う。正直に言えば、俺は全くそれに同調できなったし、興味ももてなかった。だから、なぜ理論をやるのか、理論の意味は何か、ということに関する決定的な立場の違いがあったんだ。今でも俺は、むしろ理論は現実世界に対する考え方をまとめるための道具であると思っている。それが一番力を発揮するのは、誰かが自信を持って何かを一般的に正しいと主張しているときに、それに対する反例を見つけるときなんだ。
合掌。