現代マクロ経済学で合意されていること、合意されていないこと。


AEAの新しいジャーナルがぼこぼこ届きだしたんだけど、マクロのをのぞいてみると、上のようなお題についてのウッドフォードの短い論文が載っていた。門外漢にはちょうどいいまとめになるかもしれないので、ものすごく大雑把だけど、簡単にまとめてみる。


1: 60年代から70年代 ネオケインジアン vs. マネタリスト

ネオケインジアン −  IS-LM, 構造方程式推定で短期予想、データへのフィット重視、ミクロ基礎無し。 
マネタリスト − 構造方程式推定で短期予想は無理、長期で成立するロバストな性質を強調、経済的直観とデータのラフな解釈、ミクロ基礎無し。


2: 70年代から80年代 現代マクロ経済学の方法論の確立

新古典派&リアルビジネスサイクル: 構造モデル。動学的一般均衡。昔の対立は同じモデルの使い方の差として消化されることで発展的に解消。
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3: 現時点での共通了解事項

(1) 動学一般均衡モデル: 人によって何を基本モデルに持ち込むかは違うが、基本モデルは同じ/基本モデルとの整合性が求められる
(2) 数量的インプリケーションが重要: 構造モデル推定と仮想的な政策評価
(3) 期待を内生的に取り扱うべき: 合理的期待
(4) 実物的なショックが主要な循環要因: 技術的ショック、選好ショック、政策ショック 
(5) 金融政策はインフレーションをコントロールするのに有効: 


4: 現時点での対立軸

「モデルがまだ駄目」vs.「他に使えるものがないんだからとりあえず使えばよい」*1


後は、マンキューの「科学者としての経済学者」vs「エンジニアとしての経済学者」の話は事実誤認で、現実には現代マクロ経済学は政策に影響を与えてるんだよ(IMFモデル、ヨーロッパ中銀モデル、RAMSES,NEMOなど)、とかなんとか。細かいところが知りたければ、数ページなので実際に読んでみよう。

*1:この一つ前のChari, Kehoe, McGrattan論文は、「シンプル、少ないパラメーター数、マイクロデータとの整合性、などを重視したモデルを政策についての考えを整理するために使う、マクロデータへの完全なフィットは無理」vs.「マクロデータへのフィットを重視、多数のパラメータと新しいタイプのショックを導入」という対立軸を挙げている。