なぜ白人の生徒は黒人の生徒よりいい点をとるのか?


エミリー・オスターのことはもう記事にしたけど、残りの12人を下のリストにそって順に一般向きの記事にしていったら、結構読んでくれる人がいるんじゃないか?、ということを思いついた。ただ一人でやるのはめんどくさいので、バトンみたいにして誰か一人づつやってくれたらいいな〜と思ったんだけど、やってくれそうな経済学のブログはそんなにないか......


まあ、とにかくまずはロラン・フライヤー(とレーヴィットの共著)の「Understanding the Black-White Test Score Gap .......」から。後は暇になったら考えよう。


で、まず前提としては、黒人の生徒は白人の生徒より圧倒的にテストの点数が低いっていうのがあったわけだ。もちろん、黒人がより恵まれてない環境にいるからそうなっているということもある。ただ不思議なのは、そのような変数をできるだけ含めた後でも、テストの差を説明しきることはできないのだ。別の言い方をすれば、同じような家族構成の家に生まれて、両親の収入が同程度で、同じ地域に住み、同程度の学校に通ったとしても、黒人の生徒の点数は白人の生徒より平均して低くなるわけだ。これは何か重要な変数がデータから抜けているからなのか?それとも、遺伝的な問題なのか?何が原因かによって、対策が異なるわけだから、これは教育政策上非常に重要な問題に他ならない。


フライヤーとレーヴィットは、Department of Educationが新しく集めはじめたデータから、面白い事実を見つけ出した。*1,*2白人の生徒と黒人の生徒のテストの点数のギャップは、幼稚園に入った時点まで遡ると(両親の社会的経済的地位、性別、家にある本の数、子供の入学時の年齢、出産時の体重、母親の出産時の年齢、などの変数を含めた後に)きれいに消えてしまうのだ。*3差が出始めるのは最初の二年が過ぎたころで、そしてその後は、その差は広がることはあっても縮まることはないということになる。点数のギャップは幼稚園入学時に起こる何かによって、引き起こされているのだ。


さてこの原因は何かということだが、彼らは最初に入る「学校の質」が問題だと考えているらしい。何故かと言うと、同じ学校に通ったほぼ同一の環境にある白人と黒人の子弟については、後々のテストの点数の差が比較的に小さくなることが観察されるからだ。*4しかしこの「学校の質」が何かというのは、彼らにもよく分かっていない。「学校の質」に関連しているとして通常使われている変数(クラスのサイズ、先生の学歴、生徒一人あたりのコンピューターの数など)は、あまりテストの点数の差を説明してくれない。何が白人と黒人のテストの得点のギャップに影響を与えている「学校の質」なのかは、重要なオープン・クエスチョンとして残されている。


「学校の質」理論と競合するいろいろな仮説も検討されてみたが、どれも今ひとつ説得力がないようだ。先生の人種が生徒に与える影響ということがよく言われるが、その影響は観察されなかった。黒人の生徒と白人の生徒の差は夏休みにつくという話もあるが、それもどうやら関係ないらしい。もう一つの仮説は、Standardized Testがそもそも白人に有利に出来ているというものだが、テストの点数以外に先生の主観的総合的評価のメジャーを使ってみたところ、ほとんどテストの評価とシンクロしていて、結論には何も影響を与えなかったそうだ。


追記: 元論文のイントロをチェックして、細かな訂正を加えました。完全に間違ったことを書くとやばいので。

*1:1998年に幼稚園に入学した生徒20000人のサンプルを数年にわたって調査したLongitudinal Data。

*2:この調査のために、Standardized Testが作成された。

*3:アジア人はテストで平均的に白人より良い成績をとるのだが、こちらの方は消えないで残ってしまうらしい。

*4:学校が問題なのは見かけに過ぎなくて、だめな生徒はだめな生徒がいく学校を、よい生徒はよい生徒がいく学校を、自分で選択していると考えることも出来る。しかし彼らは、黒人が多数の学校の白人と、そうでない白人の入学時のテストの点に差がないことをあげて、この説明を退けている。