オンラインオークションで談合?


オンラインオークションといえばこんな話もあった。*1昔々の話、まだ入札額を手動で上げていくことができた前世紀の話だ。*2その頃、次のような「変わった」現象がeBayでよく見られた。例えば、あるオークションの期限が2週間だとする。その2週間の間、なぜか価格はほとんど0のままでほとんど動かない。そして最後の最後、オークションが閉じる寸前に、入札が集中して価格が跳ね上がるのである。


何故か?一つの説明は、オークションの参加者は暗黙に談合しているというものだ。詳しく言うと、参加者は次のような戦略をとっていると考える。まず(1)「最後の瞬間」まで、価格を上げることはしない。そして「最後の瞬間」に自分の最高金額を入札する。(2)誰かが(1)のルールを「最後の瞬間」の前に破ったら、他の参加者がその時点で最高金額で入札してくる。(ProxyBiddingを仮定しよう。すると、前にも述べたように、入札する時には自分の最高金額を正直に入札することが最適になる。)なぜ、この「談合」に参加者が加わるインセンティブがあるのか?実は、ここでいう「最後の瞬間」とは、入札が通らない可能性のあるぎりぎりの時間として定義されている。このスキームのいいところは、自分が勝った場合に、その次に評価額が高い参加者の入札が通らないために支払う金額が低くなる可能性があるところだ。もしこれが参加者たちの利益になるとすれば、「最後の瞬間」の前に抜け駆けして、事実上のセカンドプライス・オークションを引き起こすのは得策ではない、ということになる。*3


ところで、面白いのはここからだ。オンラインオークションのルールはどこでも同じではない。例えば、アマゾンのオークションのルールはeBayと少し違っている(いた?)。eBayではオークションの期間が何日何時までときちんと決められているが、アマゾンではそうではない。一応前もって2週間なら2週間と期限が設けられているのだが、最後の入札があった時点でオークションが自動的に10分延長されるようになっている。つまり、アマゾンには「最後の瞬間」が存在しないということになる。そして、上で述べたような価格の動きー最後の瞬間まで低くとどまり、最後にジャンプするーは、アマゾンではあまり観察されることはなかったのだ。これは、偶然だろうか?

*1:Roth and Ockenfels、AER, 2002

*2:今はProxyBiddingがデフォルトになっているようだが、確か昔は違ったはず。

*3:もちろん自分の評価額が最大なのに、自分の入札が通らない可能性もある。だから、このスキームが参加者全体にとって得かどうかは明らかではない。しかし、細かいところは良く覚えていない...