eBay、ヤフオクなどのオンラインオークションはセカンドプライスオークションなのだ


この前話したオークションのルールを次のように変えてみよう:(1)負けた場合は何も払わない、(2)買った場合は相手の入札額を支払う。このルールと元のルールを比べると、元のルールに比べて支払う金額が勝ち負けに関わらずbだけ下がっていることになる。するとインセンティブは全く同じなので、新しいルールの元でもやっぱり自分の評価額を入札額にするのが最適になっていることが分かる。


このオークションは、専門用語でセカンドプライスオークションと呼ばれる。勝者が二番目に高い入札額を支払うからだ。*1前のルールは胴元がうはうはの変なルールだったが、このルールは、少なくともそれよりはまともだ。少なくとも、参加を強制する必要はない。ただ、支払額が自分の入札額じゃないというとこは、ちょっと変なルールに見えるかもしれない。


しかし、このタイプのオークションは、実は一般的に行われているのだ。そのようには見えないかもしれないが、ちょっと目を凝らしてみると、そこらじゅうに例を見つけることができる。例えばごく普通の、一般にイメージされているオークションを考えてみる。美術品とかが出品されて、札をあげて値を吊り上げていく、あれだ。*2事を簡単にするために、参加者は二人しかいないとする。Aさんは100万まで払っていいと思っていて、Bさんは50万まで払っていいと思っているとしよう。すると何が起こるか。「10万!」、「25万!」、「30万!」、「31万!」...... 恐らくBさんは50万に行くまでは、諦めないだろう。もちろん、50万以上の金額を提示する理由もない。すると、何回かの応酬の跡に、入札額は50万に落ち着くはずだ。*3何故これが、セカンドプライスオークションに関係しているか。100万払ってもいいAさんが、Bさんの評価額の50万円を払っている事に注意してほしい。このオークションでは、確かに自分の提示した額を払っているが、結果を見るとセカンドプライスオークションとまったく変わることがない。実は、このタイプのオークション(English Auction)とセカンドプライスオークションは、ある意味で同じものだと考えることができるのだ。*4


しかし、実際には自分の提示した額を払っているわけだから、これをもってセカンドプライスオークションが自然なルールだというのは、ちょっと屁理屈かもしれない。実はもっといい例がある。オンラインオークションだ。*5ヤフオクで入札を解説しているこのページを見てほしい。オンラインオークションのルールはEnglish Auctionと微妙に違っている。ヤフオクだけでなく最近はどこでもそうなんだが、まずあなたは自分の入札したい最高金額を入力する。この金額は他の人には見られることがない。すると、あなたの代わりにヤフーが入札額を(最大で最高金額まで)必要に応じて吊り上げてくれるのだ。例を使って、もう少し詳しく見てみよう。一つ一つの時点で有効な公開価格は、2番目に高い最高金額+100円になっている。例えば、それぞれ1万円、8000円、5000円が最高金額な3人の参加者がいるとすると、画面に表示される価格は8100円になっている。この時点でオークションが終われば、最高金額が1万円の人が買って、8100円を払うことになる。ここで9000円を最高金額とする新しい参加者が入ってきたとしよう(8000円か5000円のどちらかが最高金額を改定したとしてもいいが)。すると価格は、1万円の人が勝てる最低の価格:9100円に引き上げられる。このオークション(English Auction + 自動入札制度)は、まさにセカンドプライスオークションそのものなのだ。

*1:ちなみに参加者が二人でなくても何も問題はない。

*2:とはいうものの、実際にそんなオークションを日本で見たことがない。ただ、「ルパン3世」でそんなシーンを良く見たような気が。というわけで、日本でのオークションのイメージの定着には「ルパン3世」が一役買っているという仮説を提出したい。

*3:51万かもしれない(最低加算額が1万として)。

*4:と書くと突っ込みが入るかも知れない。もちろん、この二つのオークションは強い意味で同値(戦略的同値)なわけではない。

*5:ところで、eBayは日本に一度参入した後、2002年に撤退している。ほとんどの国ではeBayがオークションビジネスの先頭を切っているという印象があるが、日本では何故うまくいかなかったのか?