Monkey Business

tazuma2005-06-12


Nobody ever saw a dog make a fair and deliberate exchange of one bone for another with another dog. Nobody ever saw one animal by its gestures and natural cries signify to another, this is mine, that yours; I am willing to give this for that......
(アダム・スミス、The Wealth of Nations, Book1 Chapter 2)
 

アダム・スミスは交換をするのは人間だけだといった。しかし、どうやら動物は思っているよりずっと賢いらしい。Dubner&LevittのNYTimesMagazineの6月5日の記事によると*1ある種類のサルは、交換をするどころか貨幣すら使いこなすことができるのだという。


ハーバードを卒業したばかりの若干29歳のイェールの経済学者、キース・チェンは、心理学者のローリー・サントスと、オマキザル(capuchin)に貨幣を使わせる実験をしている。ちょっと厳しい見方をすれば、それが経済学的に何の意味があるのか余り明らかではない。実はチェン自身も時々、”自分が何をやっているのか、よく分からなくなる”。しかし彼には自分のアイデアをとりあえず実行に移すバイタリティがあり、そして、予想もしなかった興味深い結果に、彼はしばしば驚かされることになるのだ。


まず彼が行ったのは、コインのようなものをサルに与えて、それが果物などと交換できることを教え込むことだ。しばらくすると、もちろんサル達はそのルールをマスターした。その次には、もう少し複雑なことをやらせてみた。サルに与える貨幣の量を変えたり、果物の価格を変えてみる。例えば、今まで葡萄はコイン1枚で買えたのが、突然コイン2枚が必要とされるようになる。あるいは、デフレーションを起こしてコインの価値を上げてやる。サルはどのように消費行動を変えるだろうか?要するに価格効果と所得効果を見てやるわけだ。結果をみると、どうやらサルは経済学で考えられているような合理的な選好を持っているらしいことが分かった。*2


しかし、これは本当にサルが貨幣を理解している証拠になるだろうか?この程度のルールを覚えることは、かしこいサルにはそれほど難しいことではないだろう。もっと根本的な問題として、サルと研究者の間でだけ使われるこのコインは、貨幣というにはそもそも余りに原始的なものではないか?貨幣というからには流通しなくてはならないのでは?


しかしある日彼の見た光景は、このコインがすでに貨幣であることを彼に確信させた。彼は何を見たのか?ある一匹のサルがもう一匹のサルに近づいていき、コインを差し出す。そこで行われたのは、恐らく歴史上初めて記録されたサル同士の「売春」だった。何故かって?事が終わると、コインを受け取ったサルはすぐに彼の元に来て、それを葡萄と交換することを要求したからだ。

*1:話題の「Freakonomics」は今読んでる最中。面白い。すぐに翻訳されるだろう(一つ問題があるが...)。もう翻訳者は決まっているのか?

*2:一方で、人間に見られる”非合理的”な行動をサルもとることが、実験で確認された。二つのギャンブルを考える。一つは、グレープを一つもらい、もう一つを確率2分の1で受け取るもの。もう一つは、グレープを二つもらい、そのうちの一つを確率2分の1で失うというもの。もちろん、この二つのギャンブルに違いはまったくない。しかしサルは、人間がそうであるように、圧倒的に前者を好んだ。これはいわゆるLoss Aversionというやつで、あのカーネマンノーベル賞をとった研究の内の一つ。