復讐の甘い蜜


"Revenge is a dish best served cold." - Old Klingon Proverb.


最近は、行動科学で、MRI(Magnetic Resonance Imaging)を使った研究がはやっている。*1被験者にいろいろな行動を取らせて、そのときに活性化される脳の部分との対応を調べていくのだ。すると、抽象的なモデルだけでは捉えられない、いろいろと面白いことが分かってくる。MRIは、心理学だけではなく、最近は経済学でも大流行である。*2費用が高くつくのが、まだ足枷になっているが。


さて、UCLのチームが面白い実験を行った。まず、協調的な人と非協調的な人を用意する(もちろん彼らは役者)。次に彼らに電気ショックを与える。それを見ている被験者の32人の男性と女性達の脳をMRIで解析すると、興味深い結果が観察された。


協調的な人が電気ショックを受けているときには、男性女性に関わらず、前島(anterior insula)と前帯状回(anterior cingulate cortex)に反応があった。これは情動に関係する部分で、被験者達は電気ショックを受けている人間に感情移入しているらしい。次に、非協調的な人に電気ショックを与えると、男性と女性で異なる反応が得られた。女性の場合は、反応が弱まったものの、反応する脳の部位は変化しなかった。しかし、男性の場合は、前島と前帯状回はぴくりともせず、その代わり側坐核nucleus accumbens)に反応が現れたのだ。これは、満足したときや報酬を受け取ったときに反応する部分である。つまり、男性は悪いやつを罰することから快感を得ているわけだ。*3


ちなみに、この論文はNatureに載るとのこと。いやはや。

*1:MRI(磁気共鳴画像法)についてのWikipediaの説明。

*2:Neuroeconomicsと呼ばれている。

*3:善人を罰するのは嫌で、悪人を罰するのはいい、という話を一歩進めると、この選好を、囚人のジレンマ的状況を回避するために進化したメカニズムと見なすことが出来るのでは。