トロッコ問題 


トロッコ問題というのがあるらしい。

5人が線路上で動けない状態にあり、そこにトロッコが向かっていると想像してほしい。あなたはポイントを切り替えてトロッコを側線に引き込み、その5人の命を救う、という方法を選択できる。ただしその場合は、切り替えた側線上で1人がトロッコにひかれてしまう。

この場合は、多くの人が5人の命を救うことを選択する。しかし、次のような状況を考えてみると答えがひっくり返るというのだ。

しかし、状況を少し変化させてみよう。あなたは橋の上で見知らぬ人の横に立ち、トロッコが5人の方に向かっていくのを見ている。トロッコを止める方法は、隣の見知らぬ人を橋の上から線路へ突き落とし、トロッコの進路を阻むことしかない。......この選択肢を示されると大抵の人はこれを拒否する。

われわれは、1人をトロッコの前に突き落とすことと、トロッコを1人の方へ向かわせることとは、何かが異なるようだと直観的に感じる。しかし、なぜそう感じるのかは、社会心理学でも神経科学でも哲学でも、いまだ解明できていない。

その目的が何であれ、人を殺すのにはスイッチを入れるだけですむほうが楽なのだ、という論点は置いておくとしても、これを読む限りではここには何もパラドックスはないように思える。常識的には、人を橋の上から線路へ突き落としてトロッコの進路を阻むことのほうが、ポイントを切り替えてトロッコの進路を変えることより蓋然性が低い。そして、このような仮想的な質問をする時に、被験者の頭の中から常識を追い出すことはできないのである。