クリエイティブな仕事を長くやり続けるには何が必要か?


と、ちょっと考えてみた。

まず、当たり前だが、基本スペックとしての

(1)地頭のよさ

は大事。CPUは高速の方がいいし、メモリーの容量も多いほうがいい。しかし、こればっかりは努力してもなかなか変わるもんでもないし、年をとるにつれて性能は落ちていく。だから、生産的な仕事を「やり続ける」ためには、ほかにもいろんなものが必要だ。


そこで、落ちていく(1)の能力を補うために、

(2)物事の本質をおさえる能力

が、大事になってくる。研究を続けていると膨大な情報がインプットとして入ってくるが、本質をつかんで理解しておけば、メモリーの浪費も少なくてすむし、バラバラの知識を有機的に結合させることも簡単になる。だから時には、一部の細かいディテールをあえて忘れていたほうが結果的に良かったりすることもある。


さて、いくらスペックが良くても、リサーチは簡単じゃないから、どこかでスタックしてしまうことがある。そこで大事なのが、

(3)持続して同じことを考える能力

だ。リサーチの進展は非連続的だから、全く何の成果も出せないときがある。そこでの一踏ん張りがブレークスルーにつながるかどうかを決めるのだ。少し考えて分かんなかったから、また後で考えてみようと思っていると、次の時にはまた一から同じ思考を繰り返している、ということがある。あるいは、大体分かった、と思ってそこで細部を詰めるのを後回しにしていると、後でよくよく考えてみると間違っていた、ということがある。これはどっちも時間の無駄だし、運が悪いときには、本当は見つけられるはずだった発見を逃してしまうかもしれない。なんというか、水の中で息を止めてじっと我慢していて、そこに一秒でも長くとどまろう、とするような感じだろうか。必要なときには、ひとつのことを徹底的に考えないといけない。


さて、ここまではある程度リサーチのトピックが決まっているときに役に立つ能力だが、そもそもトピックはどこから持ってくればいいんだろう。ネタの尽きない人になるには、どうしたらいいのか?まだ若手なので偉そうなことは言えないが、ひとつ大事なのは、

(4)一貫した視点、立場、あるいは信念

のようなものだ。どんな話題にも、ある一定の視点から切り込むことができる能力といえばいいか。すべての物をバイアスを持った色眼鏡で見るように聞こえるかもしれないが、そもそもバイアスのない立場などないし、実はそのバイアスこそが前進するための原動力なのだ。これは、と思う人は、大体その人特有の面白いものの見方をもっている。バイアスのない人を目指すより、自分のバイアスを意識して、それをうまく育てるのが肝要だろう。

既存の枠を覆すような仕事を次々に生み出していく人を見ていると、表面的にはランダムに新しいアイデアを持ち込んできているように見えるが、よく見ていると、実は一段下の底流の部分できっちり考えていることがわかる。しかも、そういう人は、必ずしも本当に独創的な新しい見方を持っているとは限らず、実は一段下のレベルでむしろ本流の考え方を徹底的に突き詰めていって、そこから浮上してきたときに、表面的には本流に見える既存の枠組みに満足できない、という人たちだったりする。


もちろんバイアスは、一方で人の目を曇らせてしまう。そこでAntidoteが必要なわけだが、そのためには、

(5)自分の考えを人に話す

ことが大事だろう。考えが形になるということもあるが、何より自分の考えを別のバイアスを持った人の反論にさらすというのが重要だ。自分のバイアスをコントロールする方法はもう一つあって、それは、自分の中に別の見方をするもう一人の自分を飼っておくというものだが、普通の人には、前者の"Between"メソッドの方が、後者の"Within"メソッドよりも対話的な思考として有効な方法だと思う。ただもちろんこれは、どちらかを選ばなきゃいけないっていってるんではなくて、実際には、ふだんは頭の中で二人の自分が対話しているけど、人としゃべるときにはあたかも自分が一つの考え方にコミットしているように話すという形をとったりする。これは一種、思考の(互恵的な)アウトソーシングに他ならない。

新聞のコラムでなら、ああいう考え方もあるし、こういう考え方もあります、というふうな「バランスの取れた見方」もいいかもしれないが、対話するのには、お互いがあえて別々の立場をとったほうがやりやすいし、生産的だ。あれもこれも、というと中庸な感じで人間的には好まれるかもしれないが、そういう人同士の話だと、なんか、「そうそう」みたいにお互い分かりすぎちゃうことになっちゃって、あまり面白いことにならない。


......とまあ、いくつか並べてみたけど、こんなリスト、終わるはずがないね。他には何を足すべきだろう?


追記:実際に実行できる、もうちょっと具体的なアイデアがあればいいんだけど。なんというか、100ます計算みたいな。そういえば「知的生産の技術」っていう昔ベストセラーになった本があって、その発想には共感するんだけど、やっぱりあまり役に立った気はしなかったな。