茶の世界史
茶の世界史―緑茶の文化と紅茶の社会 (中公新書 (596))
- 作者: 角山栄
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 1980/12/18
- メディア: 新書
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しかしここでふりかえってみると、中国をルーツとし、いわゆる照葉樹林帯の代表的植物であり文化であった茶が、ユーラシア大陸の西の端に位置するイギリスにおいて、たんなるくすりや珍貴な飲料としてではなく、国民の生活必需品として根を下ろしたということは、歴史の奇妙というべきであろう。
文化としての茶と、商品としての茶の歴史をたどった本。歴史ではしばしばそうであるように、茶の歴史をさかのぼると、そこには現代からは想像もしないような風景を見つけることができる。たとえば次のような「常識」を聞いて、あなたはどう思うだろうか?
- 茶は中国からヨーロッパに伝わった。
- ヨーロッパで最初に茶を飲んだのはイギリスである。
- イギリスでは初めから紅茶がよく飲まれていた。
- かつて日本の主要輸出産品であった茶は、主に東アジアに輸出されていた。
これらはすべて間違いである。ヨーロッパに茶が伝わったのは日本の緑茶がオランダに持ち帰られたのが最初だし、イギリス(のみならずヨーロッパ)では初めは緑茶が主に飲まれていたし、日本の緑茶の最大の輸出相手はアメリカであった(で、ミルクと砂糖を入れて飲むのである)。