サイモン・シン、カイロプラクターの団体に訴えられる


フェルマーの最終定理が面白かったので、暗号解読もそろそろ読みはじめようとしている今日この頃だが、あの売れっ子作家のサイモン・シンがイギリスのカイロプラクターの団体(BCA:British Chiropractic Association)に名誉毀損で訴えられて困っているという話が耳に入ってきた。


ガーディアンに載せた記事の中の次のコメントが問題だったというのだ。

"The British Chiropractic Association claims that their members can help treat children with colic, sleeping and feeding problems, frequent ear infections, asthma and prolonged crying, even though there is not a jot of evidence. This organisation is the respectable face of the chiropractic profession and yet it happily promotes bogus treatments."

ここでシンは、要するに、BCAが全く証拠がないのに子供の疝痛睡眠障害摂食障害、喘息などにカイロが効くと宣伝していることを揶揄している。


予審では、シンには運の悪いことに、この一文が彼が「事実」を述べているものと判断されたらしい。で、イギリスの法律によると、この場合名誉毀損で訴えられた被告が勝つためにはその「事実」を証明しなくてはならない。

さらにシンに運の悪いことには、"it happily promotes bogus treatments"という部分が、BCAが嘘だと知りながらカイロが効くと宣伝していると述べていると解釈された。すると彼は「BCAが自分の主張を嘘だと知っていた」という事実を証明しなくてはならないことになる。これはもちろん、カイロが効かない(=カイロがこれらの症状に効くという客観的で十分な証拠が存在しない)ということを証明することーこれだけならシンにとっては朝飯前だったろうーよりもはるかに難しい。


シンには控訴するか和解するかの道があるが、一説によると和解金でも1500万円(Economist)はかかるだろうとのこと。このような訴えが通るようだと、個人の発言が資金力のある団体によって抑えられてしまう傾向に拍車がかかってしまうだろうから、ぜひ彼には控訴して勝訴してもらいたいところだ。