世界中の誰でも、友達の友達の友達の友達の友達だ


と、よく言われる。どんな人でも、自分の知り合いの知り合い......と数えていくと、大体5人以内(6人だったかな)でたどり着くことが出来るということらしい。これは、どれぐらいありえそうな話か?ちょっと、チラシの裏で計算をしてみよう。世界中にN人の人がいるとする。その中の誰をとっても、知り合いになれる確率が 1/Nだとしよう。*1平均してみれば、この確率は大きすぎることはあっても、小さすぎることはないだろう。


さて、ある特定の人と知り合いになる確率が 1/Nのとき、ある特定の人が知り合いの知り合いである確率はいくつだろう。そのためには、まずこの人以外のあるXさんと知り合いで、そのXさんがこの人と知り合いでなくっちゃあいけない。こういうつながりが出来る確率は、それぞれのXさんについて 1/N^2。そしてそのようなXさんは全部でN-2人いるので、この確率は N-2/N^2になる。


同じように考えていくと、ある特定の人が知り合いの知り合いの知り合いである確率は、
 \frac{(N-3)(N-2)}{N^3}
さらには、ある特定の人が知り合いのk乗である確率は、
 \frac{(N-k)(N-k-1)...(N-2)}{N^k}
になる。チョッとややこしく見えるが、中学生(?)で習う順列の知識があれば、簡単に計算できるはず。


すると、ある特定の人が知り合いのk乗以内である確率は、最大に見積もって
 \frac{1}{N} + \sum_{t=2,...,k} \frac{(N-t)(N-t-1)...(N-2)}{N^t}
ということになる。*2ところが実は、この値は、Nが大きいときおよそ\frac{k}{N}にしかならない。例えば、最初にあげたk=5のケースで、Nを一億とすれば、計算機はきっちり 5. 0000 \times 10^{-8}と弾き出してくる。


つまり、「世界中の誰でも、友達の友達の友達の友達の友達」である確率は、ほとんど0なのだ。なにが、おかしいのか。多分、誰とでも知り合いになれる確率が 1/Nであるとしたことが、この異様に低い確率の理由だろう。もちろん問題なのは 1/Nが小さすぎるというところじゃなくて、「誰とでも知り合いになれる確率」が同じだと想定したところにある。現実のネットワークは、こんなシンプルなモデルとは、全く違う。まず第一に、そもそもネットワークはローカルに密になっている。自分の近所の人と知り合いになる確率は、チェコに住んでいる人と知り合いになる確率よりも低い。第二に、コネクションが異様に多い人がいて、「離れている」人たちをつなげる役目を果たしている。ある特定の人たちにコネクトするパスを見ていくと、必ず特定の人間を通るようになっていたりするわけ。ハブの空港みたいな感じだ。もし、「世界中の誰でも、友達の友達の友達の友達の友達だ」という話が本当なら、こんなネットワークのツリー構造がそれを可能にしているに違いない。

*1:「知り合い」っていうのは、顔を知っているだけじゃなくて、実際そこそこの交友がある関係。そうじゃなきゃ、みんなブッシュを通してつながってしまう。

*2:実際はこれより小さい。